高宮町を散歩していた時、とある一角に、石材が山積みに置かれているのを見つけた。
解体中だろうか?
近所の人に聞き込みして、突き止めた家主に打診し、譲渡を承った。
解体屋に掛け合うと、運送費だけで移送してくれると言う。
有難い。
東福寺の庭に運び入れた御影石、ダンプ8台分。
さて、どう料理しよう?
2017年、スリランカで数々の仏跡を巡った。
叢の中、静かな眠りについているような遺跡群。
諸行無常の響き。
栄枯盛衰の理。
全てを諦観して穏やかな仏陀の微笑み。
「仏教王の宮殿跡」を東福寺庭に作ろうと思い立った。
駐車場を確保しなければならないので、ギリシアのアクロポリスよろしく、土手に構築することにした。
名付けて「テラノポリス」。
テーマも斬新なら、場所も前代未聞。
何もかもが前衛的な日本庭園を造築する。
テラノポリスまでの道のりは、長く険しい。
繊維絡まる棕櫚の木を切り倒し、頑健な桑の根を引き起こし、シロアリに食い荒らされた納屋を解体、野バラの棘絡まる危険な枯れ井戸を埋めた。
スズメバチに襲われ、石に指を詰め、腰を痛め、脚立から落ちた。
車で石を引き、手水を解体移築、ウッドデッキを作った。
2年目には台風が来て、庭の桃の木を倒した。
土砂降りの夜中、雨どいを直し、用水路を掘って浸水を防いだ。
今にも倒れそうな危険なブロック塀を撤去。
犬走をコンクリートで固めた。
お隣の土建屋さんと重機の力を借りて、石柱を横に積み、土手を上る石階段を作った。
手前から奥に向かって遠近法で奥行きを感じさせるように配している。
階段脇に石柱を立て、石仏を据え、柱頭にガネーシャ像を拝した。
沈丁花の香が春の訪れを告げ、梅の花が開き、水仙に続き菜の花、やがて桜が満開となる。
つつじが咲き、梅雨には紫陽花。
夏はくちなし、秋には金木犀が芳香を漂わせ、一面の秋桜、彼岸花、冬は蝋梅、1年をとおして花と香が楽しめる。
夕陽が空一面を真っ赤に染めながら彼岸に沈むと、東空から月が昇って来る。
階段を登れば、星に手が届きそうだ。
パーゴラで朝食を味わい、ウッドテラスでBBQを楽しみ、露天風呂から中秋の名月を眺め、満開の桜と共に、過ぎてゆく季節を愛でる。
いつの日か、アンコールワットのような仏教遺跡になるよう、種を植えた。
百年後に訪れる人々は、過ぎ去りし輝かしき日々と我々を懐かしんでくれるだろうか。
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